Articles 社員インタビュー マネジメント キャドセンター取締役社長に聞く、CG技術の変遷とキャドセンターにできること

3Dコンテンツ制作会社に入ろうとお考えの人に送る、キャドセンターの業務内容や取り組みを紹介する連載。第6回は、キャドセンター取締役社長の橋本拓さんにお話しを伺いました。

大学卒業後、建築設計製図の専門学校に進み、そこで出会った講師の1人がキャドセンター草創期のメンバーだったことから、同社でアルバイトを始め、そのまま新卒入社した橋本さん。社歴を重ねるにつれ、徐々にCG制作業務からプロジェクトマネジメント、管理職へと役割が変わっていき、CGチームリーダーを経て、制作統括取締役、取締役社長に。キャドセンターの歴史そのものとも言える橋本さんの経歴を辿りながら、同社の歩みや魅力、今後の展望などを紐解いていきます。

【プロフィール】

橋本 拓(はしもと たく)
1995年:株式会社キャドセンター 入社
取締役社長
キャドセンターでのアルバイトを経て新卒入社。不動産CG制作から、入社2年目に海外制作子会社の立ち上げ責任者として、単身上海へ。30代半ばからプロジェクトマネージャー、管理職へと変わっていき、CGチームリーダーを経て、2013年に制作統括取締役、2022年に取締役社長に就任。

ゼロから作る。その経験が糧に

――入社の経緯を教えてください。

大学卒業後に進んだ建築設計製図の専門学校で、キャドセンター草創期のメンバーだった講師に出会い、CGによる建築のビジュアライズに興味を持ち、キャドセンターでアルバイトをさせてもらうことになりました。当時はまだCGが今ほど一般的ではなくて、パースを1つ作るのにもPCではなく高性能な業務用ワークステーションを使っていましたが、建築家による公共建築ブームだったので、そういう新しい建築をCGでいち早く表現できるというのは、とても魅力的に映りました。そのままCG制作職として入社しましたが、当初は社員数も少なく、今のようにCG制作の分業化も進んでいなかったため、モデリングから編集・音入れまで、案件によっては、見積もりから請求までほぼすべて一人でこなすこともありました。そこでわからないながらも一通り経験できたことが現在の礎になっています。

――2年目で海外子会社の責任者となりました、当時の状況を教えてください。

オフショア的な観点から、海外に制作拠点を作ることになり、単身で上海に渡りました。現地の共同経営者と共に、事務所を借りるところ始めたので、本当にゼロからの立ち上げでしたね。現地で採用した初期メンバーは3人。そこから約2年で20名超の規模まで成長し、後任に引き継いで帰国しました。90年代の中国はまだCG技術が進んでいなかったので、上海赴任によって、個人のCGスキル面では遅れてしまうことになりましたが、ゼロから組織を立ち上げたことは、とても貴重な経験になっていると思います。

――帰国後に手掛けた、特に思い出に残るプロジェクトを教えてください。

帰国してからは大きな案件を担当することも多くなり、なかでも、2003年に開業した六本木ヒルズのプロモーション映像は印象に残っています。これだけ大規模な再開発のオフィスプロモーション映像は前例がなく、リファレンスとなるものはありませんでした。最新のオフィス空間や設備をCG映像でどう見せればいいのか、カメラワークなどを含めて試行錯誤の連続でしたが、熱意あるクライアントとともに新しいものを作り上げていく充実した仕事になりました。

――森美術館ル・コルビュジエ展の映像制作についても教えてください。

2007年の森美術館ル・コルビュジエ展映像制作も心に残っています。映像ディレクターとしてコルビジェの考え方や概念がどのようにして建築の形に昇華されていったのか、その過程を想像しながら映像化していくのがとてもクリエイティブで楽しかったですね。

東京オリンピック2016&2020招致活動用コンテンツの制作には、プロジェクトマネージャーの立場で携わりました。競技会場を紹介するCGアニメーションはもちろん、日本の招致委員会がIOCへプレゼンする際のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)やタブレット用のインタラクティブコンテンツなど、CGビジュアルに関するあらゆるものを作った、まさにビッグプロジェクトでした。

「CGに求められること」の変化

――CG制作から管理職、そして社長へと立場が移行していくなかで感じたCG制作における環境の変化や、キャドセンターの役割を教えてください。

1990年代から2000年代初期のころには、まだ存在していない新しい建築、街がこんなふうにできるという未来図を華々しく、きらびやかにイメージさせることがビジュアライゼーションに求められていました。もちろん、今もそうした役割はありますが、景気後退や人口減少などの社会問題もあるなかで、既存の建物をどうリユースしていくか、また、どうすれば老朽化がすすむインフラを長く維持させられるかなど、すでに存在しているものをデジタル化して、その維持管理方法や新しい使い方の提案をしていくためにCGが使われるようになってきています。実際、そうした目的での仕事のご依頼は増えていますし、災害対策の啓発を含め、CGを使って体験を自分事化してもらうという意味で、キャドセンターが役に立てるところはたくさんあると考えています。

――普段の社内コミュニケーションで意識していることはありますか?

社内ミーティングにはなるべく出席するようにしていて、「こういうものを作っているほうがキャドセンターっぽいよね」というような、大きな方向性だけを示すようにしています。キャドセンターの社員には、委縮することなく、自分の頭で自由に考えてもらいたいと思っていて。そういう意味では、業務時間内で技術の習得や検証を行える「社内プロジェクト制度」の存在は大きくて、挑戦したいことや、新しいアイデアの芽が自然発生的に出てくるので、それらはなるべくすべて許可するようにしています。社員の自発性や積極性を損なわず、背中を押してあげること。それが私にできることではないかと。

――理想とする会社の形を教えてください。

部署ごとにきっちり分かれていると、セクショナリズムと言いますか、どうしても新しいアイデアが生まれにくくなってしまうので、部署横断的なミーティングは積極的に行うようにしています。そうすることで、お互いの部署の事情がわかり、手を取り合って、新しいものにチャレンジしていく素地が整うのではないかと考えています。

CG制作を通して社会貢献できる

――今後の展望を教えてください。

建築の精緻で美しいCGビジュアルを作るところからスタートした会社ですが、新しい産業やこれまで関わりの少なかった業界など、社会貢献できる分野はまだまだたくさんあると思っています。たとえば災害対策やインフラ管理など、日本社会の差し迫った課題解決に対しても、情報としての価値と圧倒的なビジュアルを併せ持ったコンテンツ力で、存在感を発揮できる会社を目指していきたいです。

――どんな人材を求めているのでしょうか?

多様性が大切だと考えているので、キャドセンターにはない知識や経験、スキルや人間性を持っている方に入社いただき、新しい風を吹き込んでくれたらこんなにうれしいことはありません。キャドセンターの魅力はバーチャルだけでも現実だけでもない、バーチャル空間と現実空間をつなぐ接点での創作活動であり、常に時代の流れに寄り添った仕事ができる点にあると思います。そして創り出したコンテンツの体験を通じて、人々の気持ちや行動を変えていくこともできるとても豊かな仕事です。3DCGをやりたい、社会貢献もしたい、そんな方にピッタリの会社だと思います。

3DCGの最前線を現場で常に体験されながら、社長への就任された橋本社長。アンケート企画では、提出を恥ずかしそうにされていた姿が印象的でした。ご自身を客観的に見た橋本社長の直筆アンケートはこちらです。

多様性を大切にするキャドセンターが求める人材として、新しい風を吹き込んでくれる方を挙げられていました。現場で培った経験をもとに、働きやすい環境づくりを積極的に行っています。挑戦したいこと、やりたいことがある方は橋本社長のもと、活躍されることが期待されます。