Articles cc lab イベント・エンターテインメント #UnrealEngine CEATECのキャドセンターブースを災害が襲う!

 
こんにちは。コンテンツデザイン開発グループ リアルタイムチームの戸本です。
今回は、先日開催された CEATEC 2025 に出展したキャドセンターのブースで展示された、さまざまな災害をテーマにしたコンテンツのメイキングをご紹介します。
展示では、火災・地震・竜巻(暴風)・水害の4種類の災害が、キャドセンターのブースに次々と襲いかかるという内容になっています。
このうち、水害コンテンツについては、3DGSと組み合わせた内容を別の記事で詳しくご紹介していますので、ぜひそちらも併せてご覧ください。

災害シミュレーションの概要

以下はコンテンツのキャプチャ動画です。キャドセンターブースに災害が次々と襲いかかる様子をご覧ください。

ブースをモデリング、現場に合わせて更新

ブースのデモリングを開始した当初は、正確な図面がありませんでした。
そのため、ブースデザインの提案時に使用された解像度の低い図面やイメージ画像をもとに作業を進めるところからスタートしました。
CGで再現された空間である為、臨場感を得るためには現実に近づける必要があります。
資料が不足していたため、まずはある程度までモデリングを行い、仮組の状態で一度展示を実施。
その後、現地で撮影した写真を基にディテールを作り込み、展示開催中にもデータの更新を行うことにしました。
しかし、展示期間は4日しかありません。
できるだけ多くのより多くのお客様にご覧いただくため、できるだけ早く更新を行う必要がありました。
そのため、作業時間を節約する目的で、特徴的なディテールに的を絞って作業を進めました。

過去のデザインとイメージパースから制作された簡易的なモデルデータ

臨場感の演出

ブースのモデリングがいかに現実に近いものであっても、ただ配置しただけではどこか違和感を覚えてしまいます。
その違和感を解消し、臨場感を高めるために、さまざまな演出を加えていきました。

まずはライティングです。
前述の通り詳細な図面がなかったため、想像を交えながら照明の配置を行いました。
ブース内のダウンライトは昨年の写真を参考にし、光源の位置が目立ちすぎないように、全体が自然に明るく見えるよう、調整しています。

次に音の演出です。
会場の賑わいを感じられる環境音を配置し、現地の雑踏を感じられる演出を行いました。
特に後述する災害シーンでは、音が臨場感を左右する重要な要素となるため、何も起こっていないスタートシーンでは平穏な雰囲気を演出する音データを使用しています。

そして、最後に人物モデルの配置です。
操作する側が空間をより現実的に感じられるよう、来場者を想定した人物モデルや、実際にアテンドに立つスタッフの3Dモデルを配置しました。

意図的に周辺を目立たなくさせブースに発生する現象に注力させる演出を行い、モデリング作業時間を短縮

ブースを火災が襲う!

いよいよブースの火災演出を実装していきます。
炎の表現にはNiagaraのアセットを使用し、燃やす対象オブジェクトに合わせてアセットの位置を調整します。
また、徐々に燃え広がる様子を再現するため、エフェクトの発生タイミングを調整します。
煙が漂い、火の粉が舞い、奥で炎が見え始めたかと思うと、一気に燃え広がっていく。
そんな臨場感のある演出を目指しました。

ブースを地震が襲う!

次は地震の再現です。
この地震シーンでは、Unreal Engineの物理シミュレーション機能の検証も兼ねて制作を行いました。
壁に一部固定されて揺れるオブジェクト、徐々に倒れていく壁、ぶら下がったまま揺れるオブジェクトなど、すべてUnreal Engineの物理シミュレーションによって再現しています。
また、揺れる地面上に操作キャラクターを配置すると、地面の動きに合わせて操作キャラクターも動いてしまうため、揺れとは同期しない「もや」や「ほこり」のエフェクトを追加し、揺れの様子を視覚的に感じられるようにしています。
地震の揺れは実際のデータをもとに再現しており、演出上の効果を高めるために振幅を数倍に設定しています。
なお、これらの設定については、体験者に対して事前に説明を行っています。

ブースを竜巻が襲う!

続いては、竜巻がブースに襲いかかるシーンです。
暴風のビジュアライズはこれまでにも経験がありますが、竜巻は一方向に吹く風とは異なり、回転を伴う特殊な流れを持つため、それに合わせた設定が必要となります。
竜巻そのものを表現する渦巻はアセットとして配置し、風の影響を再現するために、推力を発生させるアクター(装置)を設置しました。
さらに、竜巻が近づくにつれて風の影響が変化するよう、強度の異なる複数のアクターを配置し、時間経過に合わせて順次起動するようタイミングを調整しています。
これにより、徐々に風の勢いが増し、竜巻の接近をリアルに感じられる演出を実現しました。
また、前述の地震シーンと同様に物理シミュレーションを適用し、オブジェクトが風を受けて揺れたり飛ばされたりする様子を再現しています。

今後も活躍する社員アセット達

災害を映像やコンテンツ内でビジュアライズすることは、備えの大切さを実感するために非常に有効な手段であると考えています。
実際の災害を再現することで、単なる知識としてではなく、体験的に危険性や対応の重要性を理解することができます。
今後も、より臨場感のある表現手法や物理シミュレーションの検証を重ね、現実に近い災害体験を再現することを目指します。
そして、これらの技術を通じて、防災意識の向上や減災に役立つコンテンツの開発を続けていきます。