Articles cc lab イベント・エンターテインメント ガウシアン・スプラッティングで水害表現

 
こんにちは、コンテンツデザイン開発グループリアルタイムチームの菅木です。
キャドセンターは、2025年10月開催の「CEATEC2025」で出展し、多数のコンテンツを展示しました。
中でも、防災分野については、水害、火災、地震、竜巻といった数種の被災が体験できるコンテンツを展示し、防災分野の課題解決ツールの一つとして多数の方にご興味を持っていただけたようです。
水害コンテンツについては、既往の記事でもご紹介している3DGS(ガウシアン・スプラッティング)を用いて、展示会前日に撮影した動画から会場のモデルを作成し、そこに流体表現を重ねることで、会場で被災を体験できるコンテンツを制作しました。
今回は、3DGSを活用した水害コンテンツに焦点をあてて紹介いたします。

水害コンテンツの紹介

下記は、展示したコンテンツのプレイ動画です。

実際に体験していただくキャドセンター展示ブース付近が浸水していく様子を、一人称視点で体験できるコンテンツとなっています。

3DGSによる制作について

本コンテンツでは、出展ブース付近と周囲の背景の3DGSを別で生成しています。
出展ブース付近については、別のスタッフが生成した精細なデータを使用しました。
今回は背景用に使用した広域の3DGS生成についてご紹介いたします。
背景用の3DGSは360度カメラでブース周辺を撮影した動画から作成しました。360°画像はそのまま解析に使用できないため、下記のように周囲8方向の画像を切り出して使用しています。

3DGSの生成には「gsplat」というオープンソースツールを使用しました。
CUIツールのため、環境構築と使用方法に癖がありますが、パラメータ調整の自由度が高く、適当なパラメータを設定すれば、広域でも効率的に生成ができます。
https://github.com/nerfstudio-project/gsplat
今回の環境構築では、使用GPUの関係でドキュメント通りの環境構築ができず、四苦八苦しました…
 
背景用の広域のガウシアンを生成したかったので、効率とメモリ負荷を考慮し、素材には動画1fps毎×8方向、解像度1/2の連番画像を使用。
少し粗さはありますが、会場全体で広範囲の生成ができました。

流体表現の追加

流体表現は、既往の記事でご紹介したFluidFluxを使用しました。
FluidFluxは、取り込んだ3DGSを障害物として認識しないため、下記画像のような不可視の3Dモデルをコリジョンとして配置しています。
また、会場は屋内ですがより印象的に感じてもらえるように雨天の表現の追加や、現地写真を参考に漂流物をモデリングして配置しています。

さいごに

災害から命を守り、被害を最小限に抑えるためには、地域住民や企業などが自らの災害リスクを理解し、それを自分事として捉えて行動に移してもらうことが重要です。
特にCGを用いた現実感のあるコンテンツは、体験者が被災の状況を自分事として理解し、効果的に防災意識を高められる可能性があると感じています。
今回使用した3DGSをはじめ、AIを使った新しい表現手法が続々と登場しています。これらCG技術が、防災分野における課題解決の一助になることに期待しています。
 
他の災害シミュレーションのメイキングは別記事で紹介しています。ぜひ併せてご覧ください。