
Project PLATEAU(プラトー)は国土交通省が主導する、日本全国の都市を3Dデジタルデータで再現する取り組みです。建物や地形を立体的にモデル化し、用途や築年などの属性情報を付与することで、都市活動のシミュレーションや分析を可能にします。目的は、デジタル技術をまちづくりに活用し、持続可能で豊かな社会の実現に貢献することにあります。データはオープンデータとして公開され、ビジネス・研究・防災など多様な分野での活用が期待されています。
この記事ではProject PLATEAUの特徴や、具体的な活用例について詳しく解説します。
PLATEAUを活用した事例はこちら
キャドセンターが開発・制作を担当したPLATEAU活用事例をこちらのリンクよりご覧いただけます。
https://www.cadcenter.co.jp/works/tag/plateau/

キャドセンターには、他にも多数のPLATEAU活用事例があります。PLATEAU活用を検討されている方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
Project PLATEAUとは?日本全国の都市を3Dで再現するプロジェクト

Project PLATEAUは、国土交通省が2020年から推進している、日本全国の都市を3Dモデルで再現するプロジェクトです。都市の建物・道路・土地利用といった地理空間情報を高精度な3Dモデルとして整備し、オープンデータとして公開することを目指しています。これにより、従来の2D地図では難しかった都市空間の複雑な構造や機能を、立体的かつ直感的に把握できます。最終的には、2027年度末までに約500都市の3D都市モデル整備を完了し、誰もが自由に活用できる環境の創出を目指しています。
PLATEAUの核となる「3D都市モデル」の仕組み
PLATEAUの核となる「3D都市モデル」は、現実世界の都市空間をサイバー空間に再現し、意味ある情報を付与することで、多岐にわたる分析やシミュレーションを可能にするデータです。
このプロジェクトでは、単に建物の形を3D化するだけでなく、その建物がどのような「意味」を持つのかという「属性情報」を付与することが重視されています。
これにより、都市のデジタルツインを実現し、様々な分野での活用を促進しています。
例えば、建物の種類や用途、築年数といった情報が3Dモデルと紐づけられるため、より詳細な分析や計画が可能になるのです。
現実の都市空間を仮想空間に再現
PLATEAUの3Dモデルは、現実の都市空間を仮想空間に詳細に再現します。
地方自治体が保有する都市計画基本図や航空測量データ、都市計画基礎調査データなどを基に、建物や土地の物理的な位置や形状を高精度でデジタル化しています。
これにより、単なる平面的な地図では捉えきれない、都市の立体的な構造を正確に表現できるようになります。
特に、建築物に関しては、詳細度(LOD:Level of Detail)という概念が導入されており、LOD0からLOD4まで定義されたレベルに応じて、建物の外形から窓やドア、屋根の形状、さらには室内の構造まで、細かな表現が可能です。
この高精細な3Dデータは、都市開発や景観シミュレーションなど、多様な分野での活用を可能にします。
建物や土地に詳細な「属性情報」を付与
PLATEAUの3Dモデルの大きな特徴は、建物や土地に詳細な属性情報が付与されていることです。単に建物の形状を3D化するだけでなく、その建物が何であるか、どのような特性を持つかといった意味のある情報が含まれています。
例えば、建築物の用途(住宅、商業施設、公共施設など)や建築年、材質といった情報が、CityGMLという国際標準規格のデータ形式で記述されています。これにより、特定の条件を持つ建物を抽出したり、用途に応じた色分け表示をしたりすることが容易になります。
この属性情報は、都市の現状をより深く理解し、防災計画の策定やエネルギー消費量の分析など、多角的なシミュレーションや分析を行う上で不可欠な要素となります。

Project PLATEAUが持つ3つの大きな特徴
PLATEAUは都市のデジタル化とスマートシティ化を推進するうえで重要な役割を担います。主な特徴は次の3点です。
1. 視覚的な分かりやすさで都市の現状を把握できる
PLATEAUの大きな特徴の一つは、都市の現状を視覚的に分かりやすく把握できる点にあります。従来の2D地図では表現が難しかった建物の高さや形状、周辺環境との関係性を3Dモデルで表現することで、直感的に都市の構造を理解することが可能になります。
例えば、ウェブサイトで公開されている「PLATEAU VIEW」では、3D都市モデルを表示するだけでなく、様々な地理空間情報を重ね合わせて表示できるため、都市の変化や課題を立体的に捉えることができます。これにより、都市計画の立案や景観シミュレーション、さらには地域住民への情報提供など、多岐にわたる活用が期待されます。
2. 現実世界を再現した高度なシミュレーションが可能
PLATEAUの3D都市モデルは、現実世界を忠実に再現し、高度なシミュレーションを可能にする点が大きな特徴です。建物の形状だけでなく、材質・築年数・用途といった属性情報も付与されており、多様な物理現象の解析に活用できます。
例えば、洪水や津波による浸水シミュレーション、風の流れの解析、日照阻害の分析などを通じて、都市が抱える課題の影響を詳細に予測することが可能に。さらに、自動運転車の走行シミュレーションや災害時の避難経路検討など、安全性や機能性の向上に直結する具体的な対策立案にもつながります。
このようにPLATEAUのデータは、現実に近い条件で都市の課題を検証し、解決策を導くための強力な基盤となっているのです。
3. オープンデータなので誰でも自由に利用できる
PLATEAUの重要な特徴の一つは、そのデータがオープンデータとして誰でも自由に利用できる点です。
国土交通省は、整備した3D都市モデルデータをオープンライセンス(政府標準利用規約2.0/CC BY 4.0)で一般公開しており、商用利用を含め、誰でも自由に活用・加工・再配布が可能です。
これにより、企業や研究機関、自治体、そして個人に至るまで、多様な主体がPLATEAUデータを利用して新たなサービスやアプリケーションの開発、研究活動、地域課題の解決に取り組むことができます。
オープンデータ化により、データの利用促進が図られ、都市のデジタルツインに関するイノベーション創出が加速されることが期待されています。
PLATEAUの3D都市モデルはこんな分野で活用されている
PLATEAUの3D都市モデルは、その高精度なデータと属性情報の豊富さから、様々な分野で活用が進められています。
まちづくりや都市計画の高度化、災害シミュレーションによる防災対策の強化、自動運転やドローン配送ルートの検討といった交通分野での応用、そしてゲームやVRなどのエンターテインメント分野まで、多岐にわたる活用例が存在します。
まちづくりや都市計画の高度化
PLATEAUの3D都市モデルは、まちづくりや都市計画の高度化に大きく貢献しています。
都市の建物や土地の属性情報を詳細に含む3Dモデルを活用することで、土地利用や建物配置のシミュレーション、景観分析、日照阻害の評価などをより正確に行うことが可能となります。
これにより、例えば、新たな建物の建設が周辺環境に与える影響を事前にシミュレーションしたり、風の流れや温熱環境を考慮したスマートタウンの適地選定を行ったりするなど、データに基づいた効率的かつ持続可能な都市づくりを支援します。
さらに、都市全体のエネルギー消費予測やカーボンニュートラル実現に向けた分析にも活用され、都市経営のデジタルトランスフォーメーションを推進する上で不可欠なツールとなっています。
参考事例:容積率可視化シミュレータ

https://www.mlit.go.jp/plateau/use-case/uc22-003/
災害シミュレーションによる防災対策の強化
PLATEAUの3D都市モデルは、災害シミュレーションを通じた防災対策の強化に非常に有効です。高精度な3Dモデルと詳細な属性情報を組み合わせることで、洪水や津波が発生した場合の浸水状況をリアルに再現したり、土砂災害の危険性を視覚的に把握したりすることが可能となります。
これにより、例えば、災害時の避難経路の検討や避難所の配置計画、さらには特定の建物における浸水リスクの評価など、より具体的な防災計画の立案に役立ちます。
実際に、ARを活用した災害リスク可視化ツールや、VRを活用した避難訓練など、PLATEAUのデータを用いた多様な活用例が実証されています。これにより、地域の防災力が向上し、災害時の被害を最小限に抑えるための効果的な対策を講じることが可能になります。
参考事例:3D都市データ制作技術を活かした防災VRコンテンツで実際の街並みを使った水害時の避難行動をシミュレーション 熊本県玉名市住民が防災VRを体験

https://www.cadcenter.co.jp/topics/archives/3969/
自動運転やドローン配送ルートの検討
建物や道路の形状・高さ、電柱や信号機などのインフラ情報を活用し、仮想空間上で車両・ドローンの挙動を精密に検証できます。工事車両の最適ルート分析や、障害物・風の影響を踏まえた運航計画の策定に有効です。
ゲームやVRなどエンターテインメント分野での活用
PLATEAUの3D都市モデルは、ゲームやVRといったエンターテインメント分野でも活用が進んでいます。高精細な3D都市モデルは、現実世界に近いバーチャル空間を構築するための基盤となり、ユーザーに没入感の高い体験を提供することが可能です。
例えば、都市を舞台にしたゲームのフィールドとして活用したり、VRを活用した仮想的な観光ツアーのアプリを開発したりすることができます。これにより、地域活性化や観光振興に貢献する新たなコンテンツが生まれる可能性を秘めています。
参考事例:シティプロモーションアプリ「ほこまるGo!」

https://www.cadcenter.co.jp/works/archives/11279/
PLATEAUと他の3D地図データは何が違うのか
主な違いは「データの再現レベル・精度」と「更新頻度・カバー範囲」です。用途に応じて最適なデータを選択しましょう。
データの再現レベルと精度の違い
PLATEAUの3D都市モデルは、そのデータの再現レベルと精度の高さに大きな特徴があります。
他の一般的な3D地図データと比較して、PLATEAUのモデルは建物の形状や物理的な位置だけでなく、個々のオブジェクトが持つ意味情報、つまり「セマンティック」な情報まで含んでいます。
例えば、建物一つ一つに用途、築年数、材質といった詳細な属性情報が付与されており、これは単なる視覚的な再現に留まらない、より深い分析やシミュレーションを可能にします。
Googleマップの3Dデータが主に視覚的な表現を重視しているのに対し、PLATEAUは都市計画や防災、環境分析といった専門的な用途に対応できる、より精度の高い構造化された3Dモデルを提供している点が大きな違いです。
更新頻度やカバーしているエリアの違い
Project PLATEAUのデータは、2021年3月にVer 1.0として全国56都市の3D都市モデルが公開され、現在は全国57都市のデータが提供されています。今後は2027年度末までに約500都市へ拡大し、将来的には全国整備を目指しています。民間の3D地図データ(例:ゼンリン3D地図データ)は全国カバーで年1回更新など、更新頻度が高い傾向があります。
PLATEAUとキャドセンターが提供している3D都市モデルの違いとは

キャドセンターは、政令指定都市をはじめとした主要都市を広域レベルで整備している「MAPCUBE」、フォトリアルな表現で実写の代替としても活用されている「REAL 3DMAP シリーズ」、都市モデル上で各種データ連携するWebプラットフォーム「Virtual Smart City」など、お客様の課題や要望に応じ、多様な3D都市モデルを提供しています。またPLATEAUを含む各種3D都市モデルを活用した開発・制作事例が多数あります。
政令指定都市をはじめとした主要都市を広域レベルで整備している「MAPCUBE」

https://www.cadcenter.co.jp/solution/mapcube/
MAPCUBE®とは、航空測量で計測した高さ情報、二次元のベクトル地図情報と航空写真画像データをもとに生成した地形や建築構造物の3D都市モデルです。 起伏のある航空写真地盤モデル、精確な高さと屋上塔屋の形状も表現した建物モデルと、より詳細な形状や色味に至るまで外観を忠実に再現したランドマークモデル、この3種を基本データ構成とし、東京都23区や13政令指定都市をカバーしています。 PLATEAUとの違いは、年1回データ更新を行い、新たなランドマークなどを追加していること。変化の激しい都市の景観にも対応しています。
フォトリアルな表現で実写の代替としても活用されている「REAL 3DMAP シリーズ」

https://www.cadcenter.co.jp/real3dmap/
フォトリアルCGとしての表現力と、都市データとしての正確さ・精度の両面を追求し、空撮映像としての利用も可能とするクオリティを実現した3D都市モデル、それがREAL 3DMAP シリーズです。
そのリアルな表現力により、映画やVRなどのエンタメ利用、災害シミュレーション、不動産やまちづくりの完成予想図など、多様なシーンで活用されています。「夜景」や「リアルタイム用」などご利用目的に最適化された形で「現在の都市データ」を提供します。
都市モデル上で各種データ連携するWebプラットフォーム「Virtual Smart City」

https://www.cadcenter.co.jp/vsc/
3D都市空間におけるビッグデータ(地域・防災情報や企業が所有するIoT情報)を、ブラウザで可視化できるヴィジュアルプレゼンテーションサービスです。一般に公開されているデータの利活用はもちろん、企業所有のデータ(会員データ・購買データなど)など、「データ」をベースにした新たな顧客エンゲージメントの手段として、独自のGISソリューションとして提供しています。
3D都市モデルを活用した開発・制作事例
キャドセンターには、PLATEAUを含む各種3D都市モデルを活用した開発・制作事例が多数あります。詳細は事例ページをご覧ください。
https://www.cadcenter.co.jp/works/tag/3dcitymodel/
また上記でご紹介した以外にも様々な3D都市モデルを提供しています。詳細はサービスページをご覧ください。
https://www.cadcenter.co.jp/solution/category/digitaltwin_3dcitymodel/
まとめ
PLATEAUは、日本全国の都市を3Dモデルとして整備・公開するプロジェクトで、都市のデジタルツイン実現を通じて社会課題の解決と新たな価値創出に貢献します。詳細な属性情報を備えた高精度データをオープンに提供し、まちづくり・防災・自動運転・エンタメなど多様な分野での活用が広がっています。また、目的や用途に応じて多様な3Dモデルから最適なものを選ぶことが必要になります。
PLATEAUなどの3D都市モデルの活用をご検討でしたら、ぜひお気軽にキャドセンターへお問い合わせください。