地方創生や観光振興、防災計画において、デジタル技術の活用はもはや選択肢ではなく必須事項となりつつあります。しかし、多くの自治体様にとって課題となるのが「予算の確保」と「専門的ノウハウの不足」ではないでしょうか。
国は現在、「観光DX」や「まちづくりDX(3D都市モデル活用)」を強力に推進しており、自治体が利用できる補助金・交付金制度を数多く整備しています。
本記事では、自治体職員様やまちづくり担当者様に向けて、主要なDX関連補助金の概要と、採択に向けたポイント、そして実際の活用事例をわかりやすく解説します。
1. なぜ今、自治体に「DX×補助金」が必要なのか?
人口減少と少子高齢化が進む中、自治体運営には「効率化」と「地域の稼ぐ力の向上」の両立が求められています。
- 観光振興: データの活用で、勘と経験に頼らない集客戦略を行う
- 防災・都市計画: 3D都市モデル(PLATEAUなど)を活用し、災害リスクや開発シミュレーションを可視化する
これらを実現するためには初期投資が必要ですが、国の補助金を賢く活用することで、財政負担を抑えつつ、最先端の技術を地域に実装することが可能です。特に現在は、単なるシステム導入ではなく、「データの利活用」や「地域課題の解決」に直結するプロジェクトに対して、手厚い支援が行われる傾向にあります。
2. 【観光DX】稼げる地域をつくるための補助金

観光庁を中心に、観光地の高付加価値化やデジタルマーケティングを支援する事業が展開されています。
観光庁「観光地・観光産業DX推進事業」など
この事業は、観光地や観光産業が抱える課題をDXによって解決し、旅行者の利便性向上や観光産業の生産性向上を目指すものです。
- 対象: 自治体、DMO(観光地域づくり法人)、民間事業者の連携コンソーシアムなど
- 補助率・上限:
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- 補助率 1/2
- 上限 1,500万円(※事業タイプや年度、連携規模により変動あり)
- 主な支援内容:
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- 旅行者の利便性向上: 予約・決済システムの統合、アプリ開発、XR(VR/AR)コンテンツの制作
- 観光産業の生産性向上: CRM(顧客管理システム)導入によるリピーター施策、在庫管理のDX
- 高度なデータ活用: 人流データや消費データを活用した需要予測、マーケティング戦略策定
- 申請のポイント:
単なる「アプリを作りたい」では採択されにくくなっています。「どんなデータを取得し、どう分析して、次回の誘客にどう活かすか」というKPI(重要業績評価指標)の設定と、地域全体での連携体制が重視されます。
3. 【3D都市モデル・防災】PLATEAUを活用した補助金

国土交通省が主導する3D都市モデル整備・活用・オープンデータ化プロジェクト「PLATEAU(プラトー)」に関連する支援です。都市のデジタルツイン化を進めたい自治体にとって最も重要な枠組みです。
国交省「都市空間情報デジタル基盤整備事業」
3D都市モデルの整備や、それを活用したユースケース開発(実証実験)を支援します。
- 活用タイプと補助率(例):
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- 通常タイプ: 補助率1/2(上限なし)
- 早期実装タイプ: 補助率10/10(定額)、上限1,000万円程度
- ※すでに開発済みのソリューションを導入する場合などに適用
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- 民間サービス実装枠: 補助率1/2、上限5,000万円
- 活用例:
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- 防災: 洪水浸水想定区域を3D地図上に表示し、住民への避難啓発に活用
- 都市計画: 再開発による日照変化や景観シミュレーション、風環境の解析
- 観光・エンタメ: 街並みをVR/AR空間で再現し、バーチャル観光やイベントを実施
- 申請のポイント:
「3D地図を作るだけ」で終わらせないことが重要です。そのデータを庁内のどの部署(防災課、都市計画課、観光課など)が利用し、どのような住民サービス向上につながるかという出口戦略を描く必要があります。
4. 【包括的支援】総務省 地域DX推進
特定の技術分野に限らず、自治体のDX体制そのものを強化するための支援も存在します。
総務省「地域デジタル基盤活用推進事業」など
- 支援内容:
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- 地域課題解決のためのローカル5G等の導入支援
- DX推進計画の策定支援
- デジタル人材の確保・育成支援
- 特徴:
ハードウェアの整備だけでなく、運用するための「人」や「計画」に対するサポートが手厚いのが特徴です。観光や都市開発といった個別プロジェクトを進めるための土台作りとして活用できます。
5. DX補助金の活用事例(ユースケース)
実際に補助金を活用し、DXを推進している自治体の事例を紹介します。
事例1:観光DX(北海道ニセコエリア)
ニセコエリアでは、リフト券・スキー教室・各種アクティビティを一元管理する予約・決済システムと「ニセコデジタルマップ/トレイルマップ」を構築しました。
- 効果: 体験商品のオンライン販売拡大と、宿泊・飲食・交通等を横断するデータプラットフォームで、閑散期の稼働率改善など需要平準化に寄与しています。
事例2:3D都市モデル×防災シミュレーション(熊本県玉名市)

玉名市では河川の氾濫リスクに備え、PLATEAUの3Dデータを活用し、よりリアルな浸水体験VRを作成しました。(制作:キャドセンター)
- 効果: 平面図などでは伝わりにくい危険エリアを、恐怖感の伴うVR演出で視覚的に伝えることで、住民の防災意識向上と早期避難の啓発に成功しました。
- 実績詳細: 熊本県玉名市「防災VRコンテンツ」制作実績はこちら
防災VRについてより詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
6. 採択されるための3つのポイント
補助金は申請すれば必ずもらえるものではありません。競争率の高い公募を勝ち抜くためのポイントを解説します。
① 「複数分野」の掛け合わせ(クロスセクター)
「観光だけ」「防災だけ」という単独の目的よりも、「3D都市モデルを整備して、平時は観光VRに使い、有事は防災シミュレーションに使う」といった、フェーズフリーな活用計画は評価が高くなる傾向にあります。
② 具体的な課題解決ストーリー(ユースケース)の提示
「最新技術を入れたい」という動機ではなく、「地域のこの課題を解決するために、この技術が必要」というロジックが必要です。
- ×:ARアプリを作りたい
- ○:看板設置が規制されている歴史地区で、景観を損なわずに多言語案内をするためにARを活用したい
③ 専門パートナーとの連携
DX関連の補助金申請には、技術的な仕様策定や実現可能性の証明が必要です。
これらを自治体職員だけで作成するのは困難な場合があります。
早い段階から、3Dデータ制作やシステム開発に実績のある民間企業をパートナーとして巻き込み、共同で申請書を作成することが採択への近道です。
7. まとめ:キャドセンターが支援できること
補助金を戦略的に活用することで、予算の壁を越え、地域の魅力を最大化するDXが可能になります。
株式会社キャドセンターは、長年にわたり3D都市モデルの制作、VR/ARコンテンツ開発、ビジュアライゼーションの分野で多くの自治体様・企業様を支援してまいりました。
- PLATEAU活用支援: ユースケースの企画からデータ整備、アプリ開発まで
- 観光DXコンテンツ: 地域の歴史や魅力を伝える高精細なVR/AR制作
- 申請サポート: 技術的な実現性の裏付けや、効果的な見せ方のご提案
「どのような補助金が使えるか知りたい」「構想はあるが技術的な実現方法がわからない」といった段階からでも構いません。まずは一度、キャドセンターにご相談ください。
8. よくある質問(FAQ)
自治体DXや補助金活用に関して、よくいただくご質問をまとめました。
Q1. 自治体DXの補助金公募はいつ頃始まりますか?
A. 多くの補助金は新年度予算に関連するため、例年2月〜4月頃に公募要領が発表され、4月〜6月頃に受付が開始されるケースが一般的です。ただし、補正予算による追加公募などが実施される場合もあるため、各省庁の公式サイトをこまめにチェックすることをお勧めします。
Q2. 観光DXとPLATEAUなどの他補助金は併用できますか?
A. 同一事業・同一経費に対する二重受給は原則禁止されています。しかし、事業のフェーズや対象経費を明確に分けることで、複数の補助金を組み合わせて活用できる場合があります(例:3D都市モデルの整備は国交省の補助金、そのデータを活用した観光アプリ開発は観光庁の補助金など)。詳細は公募要領を確認するか、専門家へご相談ください。
Q3. 専門的なデジタル人材が庁内にいなくても申請できますか?
A. はい、可能です。多くの自治体様が、技術力のある民間企業をパートナー(委託先や共同事業者)として連携し、技術的な企画立案や実装を補完する形で申請を行っています。キャドセンターでも、構想段階からの技術支援や申請サポートを行っております。






