Works デジタルツイン・3D都市モデル 大熊町デジタルアーカイブ 熊町小学校

CLIENT : 大熊町

 
キャドセンターは、福島県大熊町が進めるデジタルアーカイブ利活用プロジェクトにおいて、構想提案から企画・制作までを一体的に担い、震災および原子力災害によって失われた街並みの記録・継承に取り組んでいます。

本プロジェクトでは、中間貯蔵施設内に所在する熊町小学校を対象に、地上レーザー測量、ドローンレーザー測量に加え、3Dガウシアン・スプラッティング(3DGS)による高精細な空間計測を実施しました。取得したデータをもとに、メタバース空間上で校舎を再現し、誰もがアクセス可能な形で公開しています。
また、大熊町がこれまで蓄積してきた既存の測量データについても、利活用の方向性を提言し、デジタルツインとして統合的に活用する基盤づくりを行っています。

本取り組みは、大熊町デジタルアーカイブの具体化に向けた先行的な事例として位置づけられるものであり、今後は対象エリアやコンテンツの拡張を通じて、段階的な整備と展開が予定されています。

蓄積された測量データの“活用されない課題”への挑戦

大熊町では、震災以降、公共施設を中心にレーザー測量が実施され、多くの3Dデータが蓄積されてきました。しかし、それらのデータは十分に利活用されておらず、可視化や共有の仕組みが整っていないことが課題となっていました。
さらに、震災以降、多くの住民が町外での生活を続けている中で、地域の記憶やコミュニティの継承も重要なテーマとなっています。

こうした課題に対しキャドセンターは、点在する測量データを統合し、「大熊町デジタルツイン」として再構築する構想を提案しました。過去の街並み、震災後の変遷、そして未来の大熊町を一体的に可視化することで、単なる記録にとどまらない“活用されるアーカイブ”の実現を目指しています。
具体的には、熊町小学校のメタバース化をはじめとした体験型コンテンツの構築に加え、避難住民同士の交流を促進するコミュニケーション基盤としてのメタバース活用も推進。時間や場所を超えて人と記憶がつながる、新たな地域基盤の創出に取り組んでいます。

3DGSによる高精細空間表現とメタバース構築

本プロジェクトの大きな特長は、3Dガウシアン・スプラッティング(3DGS)データを直接活用したメタバース構築にあります。
3DGSは、写真などから空間を高精細に再構成する技術で、点の集合として空間を表現することで、現実に近い質感や光の表現を可能にします。近年、3D空間構築の分野において注目を集めている技術の一つです。

大熊町デジタルアーカイブ 熊町小学校_現地撮影_教室
大熊町デジタルアーカイブ 熊町小学校_現地撮影_体育館
3Dガウシアン・スプラッティングのために撮影された熊町小学校(上4枚:教室内、下4枚:体育館)

従来の点群データをもとにしたモデリングや、手作業による3D制作と比較して、短期間で高精細な空間を再現できる点や、現地の質感や光の陰影、素材感といった細部まで忠実に反映できる点が特長です。例えば、経年変化した壁面の風合いや教室内の空気感といった、従来手法では再現に手間を要していた要素も、より自然な形で表現することが可能となります。

これにより、記録性と体験性を両立した空間表現を実現しています。

大熊町デジタルアーカイブ 熊町小学校_1年2組メタバース空間
大熊町デジタルアーカイブ 熊町小学校_1年2組メタバース空間_タイル
メタバースとして3D空間上に再現された熊町小学校:1年2組
大熊町デジタルアーカイブ 熊町小学校_5年2組メタバース空間
大熊町デジタルアーカイブ 熊町小学校_5年2組メタバース空間_タイル
メタバースとして3D空間上に再現された熊町小学校:5年2組
大熊町デジタルアーカイブ 熊町小学校_体育館メタバース空間
大熊町デジタルアーカイブ 熊町小学校_体育館メタバース空間_タイル
メタバースとして3D空間上に再現された熊町小学校:体育館

活用と今後の展開

メタバース完成後には体験会を実施し、町職員や住民からは「このような形でデータが残ることは望ましい」との評価を得ています。

今後は、キャドセンターがこれまで培ってきたGISソリューションの知見を活かし、個別に取得された測量データを「大熊町全体のデータ基盤」上に統合していく構想も検討しています。過去の街並み、震災後の変遷、そして未来の大熊町を一体的に提示するとともに、復興に伴い変化し続ける街の姿を蓄積し、“大熊町のエンサイクロペディア(百科)”として継続的に活用可能なデジタルアーカイブの整備を目指します。

大熊町デジタルアーカイブは、単なる3Dモデルの蓄積にとどまらず、地域の記憶を未来へとつなぐための基盤づくりです。
キャドセンターは今後も、メタバースやデジタルツイン技術を活用し、復興と地域価値の可視化に貢献していきます。

※本コンテンツを体験する様子がNHKニュースで紹介されました。詳細はTOPICSページをご覧ください。
TOPICS : 大熊町のメタバースがNHKニュースで紹介されました
https://www.cadcenter.co.jp/topics/archives/11645/